社会人学生1対1対談
11/29(火) 18:30~ 八千代エンジニヤリング本店

対談の様子(撮影:内藤歩)
今回は、八千代エンジニヤリングの上田真紀子さんからお話を伺いました。
-まず自己紹介からお願いします。
原田千葉大学園芸学部4年の原田恵です。私がいるところは緑地環境学科で、造園領域が専門の学科です。所属している研究室は地域計画学というところです。研究室の先生がまちづくりのプロジェクトと子どもの遊び場をメインにやってらっしゃる先生で、私はそのプロジェクトに学生として参加しています。
上田私は早稲田大学で、佐々木葉先生の研究室を出ました。入ったときは土木工学科でしたが、学科名が変わり社会環境工学科になりました。修士まで景観の研究をして、コンサルタントに就職し、今5年目になります。会社に入ってからは地域計画、社会計画をやっている部署にいます。私は元々、大学では都市論に興味がありました。早稲田の理工学部には文系と理系の中間的な「複合領域」というコースがあり、そこに進もうと思っていました。4年生になり、付こうと思っていた先生が京大に赴任してしまったので、一番近い研究ができそうな景観・デザイン研究室に入りました。
会社に入ってからは、景観の業務はほとんどやっていません。今までで一番多いのは自治体から受注するバリアフリー関係の業務です。法律の枠組みにしたがって、地域のバリアフリーの構想を作成します。業務の中では、障害のある方々とワークショップをしてバリアフリーの課題を抽出し、道路管理者や鉄道事業者などの事業者さんに対策を検討していただき、事業計画を作っていきます。
地域にコンサルタントが入る意味
上田ここ1、2年は新しい分野で、観光・交流関係の業務があります。これから切り開きたいと思う分野です。都市と地方がもっと連携して、お互いに支え合っていきましょうという考え方です。現在は都市側の自治体から業務を受注し、さまざまな連携を提案しています。例えば、バスで都市の人を地方に連れて行って、地方でしかできない経験をしてもらったり、逆に地方の産品を都市で売るアンテナショップを作ったりという取り組みです。業務では、都市と地方の間に立って調整をする立場で、これらの活動を通じた交流の促進を支援しています。
原田私は今、卒業論文を書いている途中で結構やばいんですけど。論文の内容は、対象地のまちづくり活動の組織がたくさんある中で、連携が取れていないっていうのを感じていて、それらのネットワークを形成したらいいんじゃないかという内容なんです。その場所が群馬県の桐生市で、そこも都市と地方の観光交流に力を入れようとしてやっているところです。銀座にアンテナショップを出したりしているんですけど、中々、呼ぶのとリピーターとして来てもらうのが難しいと観光交流課の方がおっしゃっていました。
上田よくわかります。
原田企画をしてそれに来る方は多いと思うんですけど、そこからさらに自分達で行ってもらうのにどう繋げるかが難しいのかなと思いながら聞いていました。
上田実際、この業務での企画も、思うほど人が集まらないのが悩みです。いわゆる観光ツアーの、バスで慌ただしく見てまわる企画と比べて、地元の人とじっくり交流する場を設けるような企画なので、魅力的だと思うんだけどね。利益を取らずにできるだけ安くしているし。参加した人には満足してもらえるし、安かったと言われるんだけど、参加してもらうまでが難しいんだよね。
原田その行けばの行くまでが難しくて。周知とか広報の方法って難しいなとすごく感じるんですけど。
上田観光PRはどこでもやっているしね。PRするのが当たり前の時代に、他と差別化するのは難しいことだと思う。お洒落なパンフレットを作ればいいわけじゃない。
原田私の印象なんですけど、卒論でそういう話を聞く中で、広報とかPRに関してはやっぱりコンサルとか専門家の人がやって欲しいのかなと思うんですけど。
上田でも広告代理店とかコンサルタントが作った、お洒落で効果的なチラシを配れば人がくる、というものではないんじゃないかな。それよりは地元の人が特産品を持って東京に出てきて、方言丸出しで喋ったほうがずっといいと思う。こんなことを言うとコンサルタントって何なんだろうって思うかもしれないけど、コンサルを頼りにしている所でうまくいった所なんか見たことがない。これは観光に限らず、まちづくりやまちおこし全体に関してだけど、コンサルタントなんか役に立たない方がいいと個人的には思っています。そういう自己矛盾はいつもある。
原田必要としているレベルだったらもう入っていっても意味が無いのですか。
上田コンサルタントに来てほしい、って市民が本当に思っているとしたら、その時点で市民力は低いんじゃないかな。「活性化したいのでアイデアください」なんて言われて、よそ者のコンサルタントが入っていって、色々調査して、こんなんいいんじゃないって、ちょっと知った感じで企画をしても、あまりうまくいかない。結局、自分たちで考えていなければ、「これはやれねえなあ」とか、「リスクがある」とか言って動かないことのほうが多いんじゃないかなっていう気はするけどな。自分達が考えて動く方がずっと大事で。まちづくりのコンサルタントって何が専門技術だと思う? 私は、5年働いてもまちづくりの専門家だなんてとても言えない。バリアフリーの法律は一般の人より知ってるし、アドバイスもできる。でもまちづくりに対してその地域の人が自分で考えるよりいい提案ができるなんて思えない。きれいな資料やパンフレットは作ってあげられるし、フローチャートを書いてあげることはできるかな。地元の声を計画書っぽくまとめるっていうこともできる。でも結局は、本質的には役に立たないと思う。
原田私の卒論は、市民組織の人とかに話を聞くのが調査のメインなんですけど、そういう人達から話を聞いたときに、経験が欲しいから専門家とか、コンサルタントに入ってきて欲しいっていう発言がたまにあります。自分達は井の中の蛙でしかなくて、それを外から見たときにどういう位置づけにあるの、とか、他のまちはどういうことをやっているの、という事を知りたいときに自分達は数を見られないから、そういう経験を聞かせて欲しいという話を聞いたことがあるのですけど。
上田それだったら学識経験者にシンポジウムをやってもらったほうがいいんじゃない? いっぱい写真使って2時間くらいしゃべってもらえば、みんな喜んでくれるよ。別にコンサルタントを批判するつもりは無いんだけど。
コンサルタントは必要ない?
上田会社に入って最初に深く悩んだのは、コンサルタントって、お金がかかるんだよね。例えば、4班構成のワークショップをやろうとしたら8人必要。司会も入れたら9人。準備に何日かかければ、簡単に1回50万円くらいかかっちゃう。さらに、その倍ほども利益(事務方の経費や会社の運営費・会社の利益)として計上しなきゃいけない。それなら地元のNPOとかに100万円あげたほうがよっぽどいろんなことができるんじゃない? 5回やるんだったら500万円あげればいいんじゃない?って思った。今でもそう思うけどね。地元の人が自分達でお金を生み出したり、役所を巻き込んで補助金を引っ張ってくることができて、自分達で考えて活動できるなら、その方が絶対いい。
原田逆に、仕事をしている中でこれは良かったというか、役に立ったのではないかって思うときありますか?
上田いわゆる「まちづくり」と行政計画づくりは少し違って、行政計画をつくるにはコンサルタントが必要だね。例えばバリアフリーの仕事だったらコンサルが入る意味は分かりやすい。障害者に問題点を教えてもらって、課題を共有して、事業者と連携して計画をつくる。障害者が自分でバリアフリー化を進めることはできないけど、コンサルタントが効果的な計画を作れば、目に見えた成果が出る。自治体は委託をすることで、実効性の高い計画をつくるためのノウハウを得ることができる。計画を作る意味は、計画に位置づけた事業を進めること。それは障害者が自分達で役所に要望書を出して「参考にさせていただきます」なんてありがちな回答をもらうよりは圧倒的に力があって、そこにお金をかける価値はあると思えるんだよね。私はバリアフリーをやりたくてこの会社に入ったわけじゃないけど、成果が目に見えて、意味のある仕事をやれているっていうのは心の支えになっている気がする。地元に踏み込んでまちづくりをやりたいとか、景観の仕事をしたいというのは確かにあったし、今もそういう仕事はおもしろいだろうなと思うけど、自分が働いて役に立てるかも大事で。終わった仕事を振り返ってみて、その仕事によってまちが何にも変わってなかったらがっかりしちゃうし、それでお金をもらったことって何だったんだろうって思う。意味があったな、と思える仕事がいくつかあって、それを支えにやっている気はします。
書類で地域に貢献できること
原田計画ってそうなんですね。私の研究室も計画系なので、先生が計画作りに学識経験者として関わってらっしゃったりしています。ただ、計画は縛りとしての効果があるんだっていうのは初めて知りました。
上田仕事をしてからの方が計画とは何なのかっていう理解は深まるかもね。総合振興計画とか都市マスタープランって、それだけを本として読んでも、ありきたりのことが書いてあるだけでくだらないなという感じがするでしょ。計画ってすごく無責任だと思う。書いた通りにならなくても、日本語がおかしくても、誤字があっても、人が死ぬわけじゃない。それは設計との大きな違い。無責任な計画書って世の中にいっぱいある。でも、そこに言葉が書いてあるか書いていないかの違いはすごく大きい。書いていないと予算もつかないし、その分野の話は進まないんだよね。当たり前のことをきちんと書いておかないといけない。そういう意味では、行政計画づくりは結果がすべてだったんだけど、ここ10年くらいで住民参加がしきりに言われるようになって、計画を作るプロセスがまちづくりの一環になることが重視されるようになった。ワークショップをしながら計画を作って、地域のリーダーを見つけて次の展開に結びつけていこうっていう流れにはなっている。
原田今までは計画として成果物があるっていうのが一番大事だった頃から計画を作るプロセスが大事になってきたということですか。
上田どっちも大事。いい計画を作らないとその先も良くはならないけど、プロセスも重視されるようになってきた。まちづくりは住民が参加するっていうより元々、住民がやっていくものだけど、そういう仕事がコンサルタントに委託で出てくることはあんまりない。一方、何かの計画を住民と一緒に作りましょうっていう仕事はある。住民参加っていう言葉はそういう意味だと思う。コンサルタントとして仕事をする上では、計画づくりの中でまちづくりの力になるようなきっかけをどれだけ作れるかっていうことを考えたいし、その先にいい展開になるような言葉をどれだけ計画書に埋め込めるか、っていうことを大事にしたい。大体の行政計画は、書かなきゃいけないことは法律とかで決まっているから、手を抜こうと思えば、どこかの計画をもってきて名前を変えちゃえばいい。それをどれだけオリジナルにして地域のためになることを書けるか。それとそのプロセスの中でどれだけきっかけを作ってあげられるか。言っているほどやれているわけじゃないんだけど、そういう気持ちはあって、なかなかそうならないから歯痒いって感じてる。
女性として建設コンサルタントで働くこと
原田是非聞かせていただきたいなと思うことがあります。最近、ご結婚なさったって伺ったんですけど、やっぱり女性としてコンサルで働くのは大変なんですか。
上田大変ですよ。将来は全く見えない。どうしたらいいのか分からない。正直。
原田周りの方で女性のコンサルの方って少ないですか。
上田下には大分増えたよね。うちの会社で採用している女性社員はここ数年はすごく増えてる。自分より上の女性社員は結婚してやめる人も多いし、子どもを産んで復職してがんばっている技術職の人は少ないのが実態ではある。それを頑張ってうまくいかなかった人もいる。確かにコンサルタントは忙しい仕事だけど、自分さえ納得できれば忙しくなく働くことはできると思う。契約社員になってもいいし、正社員のままでも、残業しないで責任ある仕事を引き受けないようにして働き続けてもいい。うちの会社の場合は、産休も育休もとれるし、10時から4時っていう育児時短もできる。でも、そういう働き方で満足できるかは別の話で。今だって、別に好きで残業しているわけじゃないけど、その仕事を自分が責任もってやるためにそれだけ働かなきゃいけないと思っているからそうしているわけでしょ。そんなに働かないっていう選択は、責任を持てないっていう選択で、それでいいと思えるかっていうのはずーっと悩んでいる。結婚すること自体は何か変わるわけじゃない。私は相手もコンサルなので今は仕事が遅いことにも理解はあるけど、二人とも帰ってこないような感じだから、将来子どもができて交互に保育園のお迎えに行くとかいうことになったら、共倒れになっちゃいそうで。どうしたらいいのかなーってずっと思っている。
原田それは人によりけりっていう感じですか。
上田うん。
原田ありがとうございます。参考になりました。
今回の対談を振り返って
原田ものすごく個人的なことを話していただいて充実した時間でした。コンサルタントは無ければいいんじゃないかっていう話はその方面を志望していた身としてはなるほどと思ったりもしつつ、だからといって無くなることもないんだろうな、と何となく思いました。自分が実際就職するときに難しく頭で考えるよりも、どんどん現場に出て行って自分の生の経験から感じてくればいいのかなと今のお話を聞いて思うことができて良かったです。
上田あんまり明るい話をしてあげられなかった気がするので申し訳ない気持ちもあります。私自身も、コンサルタントの職能って何だろうとずっと悩んでいるんです。土木構造物づくりよりまちづくり、まちづくりよりひとづくりっていう社会的な流れがあるよね。コミュニティデザインを批判するつもりはないけど、ひとづくりの時代のコンサルタントとしてすべきことっていうのが、業界自体として全然見えてないんじゃないかなって思う。ものや場所を作るプロとしてのコンサルタントの仕事はあるし、コンサルタントがまちづくりを誘導していくことはある程度、職能としてはあり得ると思う。だけどひとづくりに対してコンサルタントがどうあるべきかってすごく難しい。ひとづくりまではいかないんだけど、ひとに関われる機会はちょくちょくあるっていうところで歯痒い思いをするっていう立ち位置な気がする。本当にひとづくりをしようと思ったら地域に入り込むしかない。それはお金の面でも委託っていう仕組みの面でも今のコンサルタントがやれることには基本的には限界がある。自由にやっている人達もいるように見えるかもしれないけど、それだって本当かなって個人的には疑問に思っている。まちづくりの仕事を志して、山崎亮さんのような働き方に憧れている人は多いと思うけど、コミュニティデザイン的なことは、正直、会社員の仕事としては成立しにくい。儲からないし、そんなに時間も使えない。だから、お金を稼ごうとするのを諦めれば違う生き方はあるかなって思っている部分はある。でも、やっぱり私はお金が欲しいから会社員になっていて。会社員として、社会人としてちゃんとお金をもらいながら、ちょっとでもまちと関わることのできるギリギリのところで、面白い仕事を探して働いているんじゃないかなというのを今日改めて確認して、そんなスタンスなんだから悩むのもしょうがないか、と思いました。
